秋の雨上がり
ふと目が覚めたら、雷鳴と共に雨音も聴こえてきた。秋にしては珍しいなかなかの雨らしい。愛猫がわたしに気づき伸びをしながら一瞥し、すぐに窓の外の雨を眺め始めた。
今日は書道教室の日である。
冬の作品を1枚、仕上げるべく、激しくなる雨音を聴きながら字形を整え、文章の配置を考える。
誰も喋らない。ただ雨音と筆と紙の音が聴こえる。
「あら、素敵じゃない」
と先生はにっこり微笑み、「今日の雨が上がれば少しはこほるような空気になるかしらねえ」と呟いた。
夕焼け空 焦げきはまれる 下にして
こほらむとする 湖の静けさ
外に出ると、雨は上がり日が差し込んでいた。空気は少し、ひんやりとしている。薄い空色の空の遠くに浮かぶ羊雲の間を、飛行機雲が切り裂いていく。風が優しくススキを撫でた。
もう、秋である。