日常

日常を綴ります

桜の出会い

今年は家の近くも職場の近くも桜並木があり、毎日毎日桜を眺めた。友人と遊ぶ際も桜を眺め、桜づくしの春だった。

 

桜といえば、わたしは女三の宮と柏木の出会いを思い出す。

桜が満開の中、女三の宮の邸の庭で蹴鞠をする柏木たち。たまたま、猫が御簾を巻き上げ中に入り、端に寄っていた女三の宮の姿が露わになるとき、柏木はその姿を見てしまい、恋に落ちる。

はじめてこの若菜を読んだとき、えー…軽くないかな二人とも?とあまり面白みを感じなかったし、女三の宮のことを全く好きになれなかった。

しかし、いま考えてみると、恋愛期間中女性の顔を全く見れない男性からしたら、桜吹雪の中ちらりとみえるその姿、チラリズムと演出性にやられる気がする…

女性からしたら、今まで猛烈なアタックなどうけたことなく、父の言う通り言う通りに生きてきて、強引かつこれからのわたしどーなるのかしら…!なドキドキにやられる気がする…

 

つまり二人はよくある「学園祭マジック」とか「花火マジック」とか、そういった若い頃によくある演出ありきの燃え上がりだったのではないだろうか?と思う。

日本版ロミオとジュリエット

 

もちろん、それだけではないのだろうけど、タイミング、演出、そして溢れる若さゆえの恋愛。いわゆる恋愛。

 

そりゃあ、今見てもこんなに美しいんだから、もっと美しく映っていただろうなぁ、と、平安時代に想いを馳せる。

 

桜は始まりとともに、終わりに向かう象徴のように思う。女三の宮と柏木も、恋すると同時に終わりへ向かって行く。

憎いのは、女三の宮が柏木に対して恐れを抱いていることだ。瞬間的なドキドキから目覚めてしまってからは、もうなにも輝かない。

 

女三の宮の桜は、静かに散り積もっていた。

 

 

だからわたしはメイクする

劇団雌猫の「だからわたしはメイクする」を読んで、わたしのメイクする理由ってなんだろう?と振り返ったおはなし。

わたしがメイクをするきっかけは三段階ある。ひとつめは母親からパリの香水をもらったこと。このかわいい香水瓶と可憐な香りに見合う女になりたいと思ったからだ。

ふたつめは大学時代の友人たちがあまりにも可愛かったこと。写真をみるたびに落ち込んだものだ。

みっつめは入社してすぐ、「せっかくこの会社にはいったなら安くお化粧品買って綺麗にならなきゃもったいない!」と先輩にいわれたこと。

中でもみっつめが本当に今のメイクへの思いを産むきっかけになったと言ってもいい。

わたしは第一志望の会社ではない会社で働き始め、今後やりたい職種があるわけでもなく、毎日漫然と過ごしていた。

配属されたお店は化粧品の売り上げが全国3位に入るお店で、BAの先輩も凄腕として有名だった。大して美人でもない、そんなにメイクに興味もないわたしからすると眩しかった。

そんな先輩が、わたしの肌悩みや似合うイメージで、スターターキットを選びプレゼントしてくれた。

「せっかくこの会社にはいったなら安くお化粧品買って綺麗にならなきゃもったいない!」

その時にそう言われた。

その化粧品で肌荒れも収まり、あんなに小さくて嫌いな目や白すぎて血色の悪い顔が、化粧品で見れる顔になった。

あ、単純なことだけど、こんなことでも毎日楽しくなるんだな、と本気で思った。

以降、わたしのメイクは変化する。

洗顔はアンドフェイス、土台美容液はソフィーナip、化粧水はエリクシール、下地のdプログラムで色を統一してマキアージュをのせる。色が白すぎるので血色をよくするためにチークは必須でコフレドール、口紅はマットなタイプがちょうどいい資生堂かぷるぷるにするにはTHREEがおすすめ。アイシャドウはアディクションで強気に。奥二重なのでピンク系よりはブラウン系で、差し色にピンクやオレンジ、緑など。

ポーチにいっぱい、かがみのまえにいっぱい、並べる。

わたしはわたしに自信がない。けれど、メイクをすると、おしゃれをして街を歩く権利を得たように感じる。前を向いて歩く、前を向いて恋をする、前を向いて生きていく。

わたしはわたしのために。

だからわたしはメイクする。

 

 

秋の雨上がり

ふと目が覚めたら、雷鳴と共に雨音も聴こえてきた。秋にしては珍しいなかなかの雨らしい。愛猫がわたしに気づき伸びをしながら一瞥し、すぐに窓の外の雨を眺め始めた。

 

今日は書道教室の日である。

冬の作品を1枚、仕上げるべく、激しくなる雨音を聴きながら字形を整え、文章の配置を考える。

誰も喋らない。ただ雨音と筆と紙の音が聴こえる。

「あら、素敵じゃない」

と先生はにっこり微笑み、「今日の雨が上がれば少しはこほるような空気になるかしらねえ」と呟いた。

 

夕焼け空 焦げきはまれる 下にして 

こほらむとする 湖の静けさ

 

外に出ると、雨は上がり日が差し込んでいた。空気は少し、ひんやりとしている。薄い空色の空の遠くに浮かぶ羊雲の間を、飛行機雲が切り裂いていく。風が優しくススキを撫でた。

 

もう、秋である。

 

日常

日常、思うことを、誰にもはばかることなくつぶやくことも、いうこともできる世界はほとんどないと思う。

だれかがみてる。

だれかが読んでる。

でも、綴りたい。

行き場がない思いに行き場をつくりたい。

という思いから始めました。

 

よろしくお願いします。